
かもめ (La Gaviota)
著者: フェルナン・カバリェーロ
訳: 浅沼 澄
出版社: 西和書林
定価: 2800円 (税別)
スペイン女流作家フェルナン・カバリェーロ(男名)による近代スペイン写実主義文学の小説です。この小説が書かれた19世紀、欧州ではイギリスのウォルター・スコット、ロード・バイロン、フランスのビクトル・ユーゴーなどの活躍するロマン主義全盛時代でした。スペインでもロマン主義の作品が多く発表されていなかにあってカバリェーロは本質をありのままを記すことだけに努めたリアリズム小説を出版しました。内容は19世紀のスペイン、アンダルシア地方の田舎の暮らし、民謡、オペラ、闘牛、セビリャとマドリ−の社交界の様子などをあるがままに描いています。当時のスペインは中南米の植民地を次々と失い、仏との独立戦争などで、国力が大幅 に低下していましたが、何とか誇りと自尊心を保とうと葛藤するスペイン人像、階級社会、人々の間で根強く 信奉されるカトリック宗教などについて触れています。作者の目的は国民性を観察し、分析し、正しく評価し、広く知っても らうことにあったが、充分その願いは達成されたでしょう。 歴史、風土を深く理解するにも大変興味深い内容です。 (2007)

齋藤孝の天才伝3 ピカソ
著者: 齋藤 孝
出版社: 大和書房
定価: 1400円 (税別)
斎藤孝の天才伝シリーズ。「ピカソは何故天才なのか?」その理由を独自の切り口と視点で語ります。20世紀最大の芸術家ピカソが生涯で8万点という膨大な芸術作品を生んだ創造の秘密や新しいスタイルにいつも挑戦し続けた創造のエネルギーをかきたてる「未完成力」とは何かをピカソの考え方、言動、行動、世界観から解明し、誰にでも分かりやすくユーモアを交えた語り口で表現し人生の教訓本として仕上げています。すっきりした構成で楽しいイラストもあり、文字は大きく、文章はスピード感があり一気に読み終えてしまう。ピカソを愛した女性、友人たちのエピソードも多数掲載されており知られざる一面を覗くことが出来る。そしてピカソを知る本の数々も紹介されています。 (2007)

ラテンの秘伝書
著者: 風樹 茂
イラスト: サガー・ジロー
出版社: 東洋経済新報社
定価: 1400円 (税別)
エリート商社マン山下君が予想だにしなかったラテンの地に転勤されたところからこのストーリーが始まる。 日本と全く価値観の異なるこの土地で衝突しながらも真の人間の生き方に目覚める山下君の姿を面白可笑しく描く小説だが、その中でこの本が伝授する“ラテン流に生きるための教訓”が興味深い。それは「約束の時間には十分遅れて到着しろ」というようなビジネスの教えから、「仕事と女なら、もちろん女を大切にしろ」や「生まれながらも身分がある」など、恋人や家族との付き合い方や階層社会に触れるものまで62個。昨今の日本も格差社会の到来が叫ばれていますが、山下君のようにラテン流生活術を実践できたらきっと楽に生きられるのではないでしょうか?この本の著者が実体験を基に我々日本人に自分らしく生きるヒントを教えます。 (2006)

ルラのなつやすみ
絵と文: ハビエル・マリスカル
訳: 細田晴子
出版社: アシェット婦人画報社
定価: 1400円 (税別)
スペインを代表するグラフィックデザイナー・ハビエル・マリスカル作の絵本「ルラのなつやすみ」(原書タイトルは『Lula va al mar』)。好奇心旺盛な主人公・ルラが大自然の中で動物やお魚さんと出会い発見を重ねていく様子が描かれています。絵本の巻末にはルラが街で目にした動植物や昆虫、建物、乗り物などのイラストがたくさん集められているのでちょっとした図鑑としても楽しめそうです。スペインでは同シリーズの「Lula, ¿de quién es este huevo?」と「Lula, ¿de quién es este bebé?」が出版されています。 (2006)

現代スペインの歴史
激動の世紀から飛躍の世紀へ
著者: 碇 順治
出版社: 彩流社
定価: 2500円 (税別)
スペインが内戦に突入するまでの経緯や独裁時代を経て民主化に移行するまでの過程、そして大きな飛躍を遂げた現在のスペインについて説明した1冊です。カレロ=ブランコの暗殺事件や、ヨーロッパで最年少=首相スアレスの誕生の著述は民主化に向けて揺れ動く政府の内幕が描かれていて、かなり緊迫感に溢れた内容でした。本書は独裁者フランコ没後から30年を経た2005年に出版されたもので、2004年3月14日にマドリッドで起きた列車爆破テロにも触れています。 (2006)

ハポンさんになった侍
著者: 永峯清成
出版社: 栄光出版社
定価: 1600円 (税別)
「スペインの南に位置するコリア・デル・リオという町にはハポン(「日本」という意味)姓を名乗る人たちが600名も住んでいて、日本人の血を引いている」。こんな事実を知って早速読んでみたのがこの一冊です。17世紀に仙台蕃の伊達正宗の命令でスペインに渡ったキリスト教徒の支倉長経(常長)と使節団を舞台した歴史小説です。セビリア市長に江戸湾砲撃を依頼する親書を渡す様子や異端審問を行うキリスト教のあり方に疑問を抱く使節団たちの心情がとても鮮明に描かれています。ちなみに、ハポン姓の由来は当時の使節団の子孫ではないかと言われています。また、支倉長経と使節団の史実をもとに制作されたスペイン発のアニメ「Gisaku」(ギサク)は2006年3月17日よりスペインで公開されています。 (2006)

黄色い雨
著者: フリオ・リャマサーレス 訳: 木村 榮一
出版社: ソニー・マガジンズ
定価: 1700円 (税別)
廃村と化したアイニェーリ村で静かに死を待ち受ける「私」。妻を自殺で亡くしてからは犬一匹と家に集まる亡霊以外に孤独を癒すものはない。この本は、「私」という主人公が残された時間の中で自殺した妻、病死した娘、消息不明となった息子、死にゆく村を追想し、愛惜と別離の想いを綴ったもの。どれも死という重い影がのしかかっているのに、失われたものに対する虚無感が美しい世界として描かれているのがこの本の魅力だ。孤独と死に抵抗することなく静かに受け入れる主人公の一言一言は言霊のようにじんわり心に響いてきます。 (2006)

日本人がはじめて聞いた
私の国の超〜常識!!
著者: ラジオ日本『外人さん大指摘!爆笑 日本人の急所!!』制作スタッフ編
出版社: 青春出版社
定価: 660円 (税込)
「ラジオ日本」のバラエティー番組『外人さん大指摘!爆笑 日本人の急所!!』でオンエアされた中から選りすぐりのネタを集めた一冊。番組のレギュラー外国人10人が自分たちの国の常識やニッポンの不思議について語り尽くします。もちろんラジオで大活躍のあの毒舌スペイン人“ペピさん”も登場!初対面で肩書きを聞かれることや、人を押しのけて電車を乗り降りする日本人にかなりお怒りのようです。ペピさんの不満からスペインのどうでもいいムダ知識まで何でも学べる爆笑本です。 (2005)

バルセロナの厨房から
著者: 高森敏明
出版社: 角川春樹事務所
定価: 640円 (税別)
著者は、東京・吉祥寺にあるスペイン料理レストラン「ドス・ガトス」のオーナーシェフ高森敏明さん。仕事柄、スペイン料理とはどんな料理ですか?と聞かれる事が多いだけに、この本はそんな疑問に答えたもの。一般的なスペインの食べ物と料理を紹介しながら、その歴史と文化、地方の料理などについて熱く語ります。食に関する個人的なエピソードが沢山綴られているので、ページをめくる毎に知識も増えそうです。 (2005)

マリオとの五時間
著者: ミゲル・デリーベス 訳: 岩根圀和
出版社: 彩流社
定価: 2200円 (税別)
夫のマリオが心臓発作で急死した。残された妻のカルメンは、夫の亡骸に語りかける。それは彼との生活において精神的に満たされていなかった彼女が、過去の不平・不満をぶちまけ、しまいには自らの不貞を告白するものだった。一人で延々と五時間に渡って語る思いのうちから、頑固で気難しい夫マリオの人格やすれ違いながらも2人が過ごした時間、その頃の時代背景などが、過去と現在を交差しながら現れてくる。それにしても意外な話の展開に驚かされた。 (2005)

物語 スペインの歴史 人物篇
著者: 岩根圀和
出版社: 中央公論新社
定価: 760円 (税別)
スペインの歴史に名を残す偉大な人物6人に焦点を当て、その人生や時代を描く。6人は「騎士エル・シド」「女王ファナ」「聖職者ラス・カサス」「作家セルバンテス」「画家ゴヤ」「建築家ガウディ」。まるで著者がその時代に戻って6人の私生活を覗いているかのように、生々しい事実が克明に綴られているので、偉大な人物がとても身近に感じられた。 (2004)

バスクとバスク人
著者: 渡部哲郎
出版社: 平凡社新書
定価: 780円 (税別)
バスク人は本当に閉鎖的で孤立した社会集団なのか?言語、社会、歴史、経済、独立運動の見地から検証し、彼らの開放的な一面にスポットをあてる。海外植民や海外航海で率先して海を渡ったのはバスク人だったというのは意外で驚き。バスク人の血液型調査や「ドン・キホーテ」に登場するバスク人像は興味深い。 (2004)

スペインうたたね旅行
著者: 中丸明
出版社: 文藝春秋
定価: 1500円 (税別)
旅の達人、中丸明氏が語るスペインのレストラン、ホテル、メトロ、バル、カフェ事情。タクシーの運転手からスーツケース代を請求されてボラレタ!と嘆く前に一読です。日本とは違うスペインの習慣やルールがわかって、ナルホド納得。ガイドブックでは得られない旅のウンチクをユーモアたっぷり伝授します。 (2004)

スペイン歴史散歩
著者: 立石博高
出版社: 行路社
定価: 1500円 (税別)
スペインを歩いて普通に目にする石碑や建造物や通りの名前。どれも長い歴史とエピソードがあるのに素通りしていたことに気付かされる。多言語他民族が共生するスペインの言語、国章、アラブ人とユダヤ人、お祭り、独立戦争、カタルーニャの「国歌」「国民の日」などテーマは多様でとても奥深い一冊です。 (2004)

シェリー酒
著者: 中瀬航也
出版社: PHPエル新書
定価: 950円 (税別)
シェリー酒の工程を奥深く追求した一冊。シェリーに携る人たちのこだわりと情熱がひしひしと伝わってきます。著者は「銀座しぇりークラブ」の取締役でシェリー界の第一人者、中瀬航也氏。著者の中瀬航也さんは、この本の執筆後「銀座しぇりークラブ」を退職。2004年12月、銀座7丁目に「銀座シェリー・ミュージアム」を独立開店しました。。 (2004)

スペインで戦った日本人
著者: 石垣綾子
出版社: 朝日文庫
定価: 540円 (税別)
スペイン内戦に参加して戦死した日本人義勇兵ジャック白井の一生を振り返る。北海道の孤児院に育ちアメリカで国際義勇兵に志願するまでの経緯や正義感溢れる彼の生き様を追う。戦線で撮られた写真の中にジャック白井の姿を見つけた時は、思わずハッとしました。 (2004)

日本人への遺書
著者: 天本英世
出版社: 徳間書店
定価: 1600円 (税別)
スペイン、詩人ガルシア・ロルカ、フラメンコを愛してやまなかった俳優の天本英世氏が自らの哲学や人生論を語る。自分を「非国民」と公言し、戦争を知らない我々世代に生きることの意味を厳しく問いかける。著者は昨年他界されましたが、生前の遺志により遺灰の一部はスペイン・グアダルキビール川に散骨されたそうです。 (2004)

スペイン「ケルト」紀行
ガリシア地方を歩く
著者: 武部好伸
出版社: 彩流社
定価: 2200円 (税別)
ケルト愛好家の著書が北欧のケルト文化がどんな形でスペインに残っているのかという探究心を基にガリシア地方を巡り歩く。ガリシアの歴史、音楽、料理、言語、住民の気質などに触れるが、日本ではあまり馴染みのない地方だけに驚きや発見も多い。 (2004)

古書もスペインもミステリー
逢坂剛対談集
著者: 逢坂剛
出版社: 玉川大学出版部
定価: 1500円 (税別)
作家の逢坂剛氏が8人の著名人と対談。お相手は鹿島茂、嵐山光三郎、出久根達郎、田中優子、高階秀爾、福島章、香山リカ。パリの古本屋の話が神保町の話に、スペイン巡礼が四国巡礼に、フラメンコが日本舞踊になどなど、話題は豊富で尽きない。 (2003)

ヨーロッパ人の奇妙なしぐさ
著者: ピーター・コレット 訳: 高橋健次
出版社: 草思社
定価: 2200円 (税別)
同じヨーロッパでも、国が違えば習慣やしぐさがこんなに異なるものだと驚かされる。この本では「遅刻がステイタスなスペイン人」と「昼食時間だけ厳守するスペイン人」を検証。心理学者、歴史家、哲学者までもが登場して、その原因を徹底分析。 (2003)

サロメ
著者: ワイルド 訳: 福田恆存
出版社: 岩波文庫
定価: 300円 (税別)
スペインのカルロスサウラ監督により映画化された「サロメ」は、1891年アイルランド人のオスカーワイルドが書いた戯曲「サロメ」に基づく。純粋無垢な娘サロメの狂おしい欲情と残酷さが文章から伝わってきます。薄い本ですが、内容はとても濃い一冊です。 (2003)

アルハンブラの誘惑
著者: 安藤まさ子
出版社: 実業之日本社
定価: 1400円 (税別)
スペインのグラナダ郊外に住む著者が、同居相手のスペイン人男性、その両親、友人たちとの間で起こる不思議で不可解な出来事をユーモラスに描いたエッセイ。登場人物のキャラや会話がとてもリアルで、スペインの家庭や社会の裏事情までもが見えてきそうです。著者は「NHKラジオ スペイン語講座」のテキストでエッセイ「グラナダだより」を連載している安藤まさ子さんです。 (2003)

女と人形
著者: ピエール・ルイス 訳: 生田耕作
出版社: 晶文社
定価: 1300円 (税別)
スペイン人紳士が、セビリアで知り合った美女と恋の快楽に溺れ、どこまでも墜ちていく愛の様を描いた物語。ルイス・ブニュエル監督「欲望のあいまいな対象」でも映画化された不朽の名作です。悪魔のような女に騙されたい男性諸君は読むべし! (2003)

狂女王フアナ
著者: 西川和子
出版社: 彩流社
定価: 2000円 (税別)
イザベル女王の次女「ファナ王女」といえば、後のスペイン王カルロス1世(皇帝カール5世)の母。そんな偉大な彼女が「狂王女」と呼ばれ、46年間も幽閉されて亡くなるまでの悲惨な一生涯を綴った一冊。語り口調で書かれているので、とても読みやすい。 (2003)

世界ビジネスジョーク集
著者: おおば ともみつ
出版社: 中公新書ラクレ
定価: 700円 (税別)
国際舞台の場で使用されているジョークを分析して世界情勢を読もうという本で、対象国はEU各国、アメリカ、ロシア、中南米など。ケチなバルセロナ人を題材にしたジョーク、働かない官僚を皮肉った中南米のジョークが図星で面白い。 (2003)

ザビエルの見た日本
著者: ピーター・ミルワード 訳: 松本たま
出版社: 講談社学術文庫
定価: 620円 (税別)
約450年前、鹿児島に上陸したスペイン人宣教師フランシスコ・ザビエルがイエズズ会や友人に出した手紙の中で綴った日本人像や日本文化をこの本で紹介。著者の解説も加えながら昔と今の日本を対比。外国人から指摘されて初めて日本のことが分かるような、そんな気にさせます。 (2002)

日本人が経営する世界の宿
出版社: トラベルヴォイス新聞社
定価: 1500円 (税別)
世界各国にある日本人が経営している宿泊所を紹介。オーナー家族のこと、宿を経営するまでのいきさつ・秘話など読み物としても楽しめる。スペインからはバルセロナにあるゲストハウスとペンションの2軒が紹介されている。 (2002)

ジプシーの謎
著者: アンリエット・アセオ 監修: 芝健介
出版社: 創元社
定価: 1400円 (税別)
ジプシー史研究の第一人者がジプシーの歴史と文化について論じた一冊。ヨーロッパで迫害の運命をたどることとなったジプシーの起源、言語、生活習慣、儀式や、スペインやドイツのジプシー政策などについて幅広く解説している。 (2002)

エル・ブジ 至極のレシピ集
著者: 渡辺万理 監修: フェラン・アドリア
出版社: 日本文芸社
定価: 1800円 (税別)
バルセロナにあるレストラン「エル・ブジ」が新鮮で独創的なスペイン料理のレシピを紹介。料理の手順が写真入りで説明してあるのでわかりやすい。監修はバルセロナで新進気悦のシェフ、フェラン・アドリア氏で、著書は料理研究家の渡辺万理氏。 (2002)
一見子供向けのマンガのようですが、実は作者の出身国アルゼンチンの内情を反映した大人向けの内容です。政治に関心の強い主人公の女の子マファルダ(mafalda)が大人をドキッとさせるような辛口トークを繰り広げますが、その語り口が子供らしいせいか、読者にしかめっ面をさせずに、微笑ませてしまうのがこのマンガの不思議なところです。他の登場人物たちも、気の強い女の子、気の弱い男の子、お金が好きな男の子、お嫁に行きたい女の子など、子供の姿をしていても、普段私達の周りにいる人間とどこか似ています。そんなところも、マファルダの魅力のひとつでしょう。また、アルゼンチンの内政や歴史に関する話題がところどころ出てくるので、南米に関する知的な興味がある方も楽しめます。「マファルダ」は60年代にアルゼンチンで登場し、今では世界でシリーズ2千万部を誇る人気マンガとなっています。2007年に日本語版が初登場。そして2008年6月には待望のシリーズ第2弾「マファルダ2 いつだって子ども!」が出版されます。 (2008/2007)