スペイン語を始めたきっかけについて教えて下さい。
昔オーストラリアに留学していた時にスペイン人と知り合ったのがスペイン語に興味を持つきっかけとなりました。日本帰国後は仕事をしながらスペイン語学校に通っていましたが、当時ははっきりとした目的がなかったので、あまり気合を入れて勉強していませんでした。その後、興味本位で始めたフラメンコに夢中になり5年ほど習っているうちに、本場スペイン・セビージャのフラメンコを見てみたいという衝動に駆られました。2002年に旅行で初めてセビージャに来たとき、この街がとても気に入った私は“また今度戻ってこよう”と心に決め、それから2年半後にその夢を実現しました。
渡西を決めてから実現するまでどの程度勉強されましたか?
留学すると決めてから本格的にスペイン語の勉強を始めました。しかし留学前に終えたのは、文法の現在・過去形までで、会話は簡単な単語を使ってゆっくり喋る程度でした。そういう訳で留学当初は、早口で捲くし立てるスペイン人のスペイン語についていけないどころか、アンダルシア地方特有の訛が理解できず、何を話しているのかさっぱり分からないという状況でした。
セビージャではどこの語学学校に通いましたか?
セビージャの中心街に位置する語学学校「CLIC」です。留学関係の本で見つけ、申し込みは学校のホームページから直接行いました。申し込みに必要な記入事項は英語で書きました。
学校のシステムについて教えて下さい。
CLICには、午前クラスと午後クラスの2つがあります。私は午前中フラメンコスクールに通っていたので、午後クラスに通いました。午後クラスの生徒数は1クラス4〜5名と少人数でしたが、午前は1クラス10名程いたようです。この学校の自慢は、充実した施設と質の高い講師陣です。館内には日本語使用に対応したインターネットが無料で使用できる他、図書館、本屋もあります。また日本人のスタッフもいますので、授業内容やクラスの相談などにものってくれました。当校の講師は教授法の資格所持者で厳しい研修を受けている方なので、教え方にも定評がありました。外国人生徒の割合ですが、ドイツ、スイス、オランダ、イタリア、アメリカから来た生徒が多く、日本人の数は全生徒数の1割程度でした。
滞在先について教えて下さい。
最初は語学学校に滞在の斡旋をお願いしました。滞在形式はいろいろありましたが、その中で「スペイン人とアパートをシェアする」という項目を選びました。私に紹介されたアパートは学校まで徒歩で通える便利なところでした。食事が付いていないのでホームステイと比べると費用は1ヶ月約320ユーロ(43200円)と割安でした。だだ、同居人でそのアパートの所有者である方が自宅で仕事をしていたのですが、仕事中は音を立てることを禁じられていたため、あまり居心地が良くありませんでした。そこで、アメリカ人の友人と一緒に住むことを決めて、新しいアパートを探すことにしました。
どのようにしてアパートを探しましたか?
不動産や就職情報などが掲載されている新聞「CAMBALACHE」で良さそうなアパートを見つけると、その物件を管理している不動産屋に行きました。そこでは手数料150ユーロ(20250円)を払うと、自分が納得するアパートを見つけてくれます。入居を決めたら、大家に敷金(通常1ヶ月分)を払い、テレビ、ソファなどの家具を揃えてもらいました。スペインのアパートには普通最低限の家具が付いていますが、そうでない場合は大家に交渉すればだいだい揃えてくれます。
新しいルームメイトとの生活はどうですか?
1ヶ月のアパート代600ユーロ(81000円)と食料品は2人で折半しています。私の場合は仲の良い友達と同居しているので、たいした問題は起きませんでした。一度だけ、家の掃除のことでもめたことがありますが役割分担をする事で解決しました。話は変わりますが、昔、スペイン人の女性とシェアしたことがあります。彼女は昼過ぎに出勤するので毎晩夜遅くまで友達を家に呼んで大声で喋っていました。一方、私は毎日フラメンコスクールに通っていたので早起きしなければならなかったのですが、騒がしくて眠れない日もありました。こういう事を考えると、ルームメイトには自分と同じ生活リズムで過ごせる相手を選ぶことをオススメします。
1日に何時間フラメンコを習っていますか?
留学当初は12時〜13時までフラメンコレッスン、14時〜17時まで語学学校、19時〜20時までフラメンコレッスンというハードな生活を送っていました。現在は仕事をしているため、週3回だけ通っています。セビージャに滞在する日本人の約80%はフラメンコを習いに留学されている方なので、フラメンコ中心の生活を送っているようです。セビージャには個人経営のフラメンコ学校が沢山あるので、1日で何校かの学校を行き来している人もいます。
どのようにしてフラメンコスクールを選びましたか?
私はインターネットで学校のHPを見て良さそうな学校を選び、実際見学に行って決めました。先生によって教え方や振り付けが異なるので自分好みのところを選びました。私の通っているスクールは1クラス10人程度でヨーロッパ圏の生徒が多いです。日本人の生徒が多いスクールもありますが、それではあまり刺激が無いのではないでしょうか。フラメンコに関する口コミ情報は早く仕入れることができると思いますが、せっかく留学しているのですから日本と違う環境で習った方が効果的だと思います。
日本のフラメンコスクールと異なる点について教えて下さい。
日本のスクールと異なる点は、全体的にレベルが高いことです。自分の踊りに磨きをかけに来る人や、自国でプロとして踊っている人たちが世界中から集まるので、いい刺激になります。先生の教え方は人それぞれなので一概には言えませんが、「理論で覚えるよりも見て覚えなさい」というような教え方をする先生が多いです。レッスン料はだいたい週1回通って1ヶ月90〜100ユーロ(12150円から13500円)です。私は週3回通っているので、割引されて60ユーロ(8100円)です。
セビージャの生活で困った事があれば教えて下さい。
暖房設備が日本程発達していないので、冬の季節は寒くて眠れない日もあります。家には熱湯がパイプを循環することで室内を暖めるオイルヒータ-があります。しかし、我が家ではプロパンガスを使用しているため、ガスが少なくなると熱湯が作り出せずオイルヒーターがなかなか温まりません。又、逆に4月頃になると気温はめきめき高くなり、6月〜8月は40度を超える日も珍しくありません。気温の変化が激しいので、体調には十分注意が必要です。
また、セビージャでも日本食が買えるお店がありますが、品数が少ないうえ値段も高いので、できるだけ日本から持って来た方がいいと思います。例えば、保存が長く効く乾燥食品(例えば、味噌汁、ふりかけ、お茶づけ、かつおぶし)や調味料(例えば、味の素、だしの素)がオススメです。また、パソコンやデジカメは値段が高いうえ、モデルも古いので、日本から持って来ることをオススメします。ちなみに、私が今一番欲しいものは海外対応の炊飯器です。
スペインで住みやすいと思う点について教えて下さい。
スペインの中でも特にセビージャは街全体がのんびりとしています。シエスタと呼ばれるお昼休みは皆バル(居酒屋)に集まってビールを飲み、ゆっくり食事をしてからまた仕事に戻ります。家に戻って昼寝をする人も少なくありません。また日が長いので春や夏になると夜の10時頃まで外のテラスで食事をすることもできます。スペイン料理には魚介類がふんだんに使われているので、日本人の口に合っていると思います。
就職活動で1番大変だった事は何ですか?
労働ビザを取得していなかった事です。多くの企業が多言語に精通した人材を探していますが、「労働ビザ保持者」を条件としています。またEU加盟国からスペインに来た外国人はビザ無しで働く事ができるので、その中でビザを持っていない日本人を雇ってくれる会社はそれ程多くありません。私は1ヶ月近く就職活動をした結果、幸運にも日本と取引のあるフラメンコドレスメーカーから労働許可証を申請してもらうことができました。
仕事で一番注意していることは何ですか?
仕事の内容はスペイン語から日本語・英語への翻訳と、英語圏の国への営業、日本の顧客とメールでのやり取りなどです。その中で、フラメンコドレスのデザインに関する顧客の要望は間違って理解すると大変なことになります。また、作る過程で製作者の意図を正確に顧客に伝えないとクレームにもなりかねません。言語の間違いまちがえを起こさないため、分からない点は自分の納得がいくまで何度も質問しています。
これからスペイン留学、就職を目指している人へのアドバイスをお願いします。
スペインは他のヨーロッパ諸国に比べると、未だ保守的な所がたくさんあります。他国の文化や言語にうとく、英語が話せる人も多くありません。英語で何とか通じると思ってスペインに留学するのは間違いです。スペイン語はできるだけ日本で勉強して来たほうがいいと思います。
また、就職先を探す方は時間とお金に余裕を持つことが1番です。こちらは企業とコンタクトを取って数ヶ後に返事が来る事もあります。スペインの会社に就職したい方は1度仕事を探す目的でスペインに来て、見つかったら契約を済ませて日本で手続きをするのが最善です。私の場合は時間もお金もなくて焦っていたので、ストレス続きの就職活動でした。私事になりますが、スペインで仕事をするという体験は将来的に自分の実力アップに繋がると信じています。現在私が関わっている仕事は、スペイン人の1家族が経営している小さな会社ですが、その一員として働くことで語学学校の勉強では得られない貴重な体験をさせてもらっていると実感しています。
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