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M・Sさん (37歳・女性・バルセロナ在住12年)
  滞在地:バルセロナ/スペイン
滞在期間:1992年〜(現在も在住)
現在:ブティック勤務

 

 

初めてスペインに行ったのはいつですか?

初めてスペインに行ったのは1990年で、グラナダに滞在しました。最初は1、2ヶ月に滞在するつもりが、結局1年近くいました。たまたま持っていた飛行機のチケットが1年オープンだったのでもう少し滞在を伸ばしてみようという軽い気持ちからでした。当時は まだスペイン語が上手く話せなかっので、大都市ではないグラナダを選びました。グラナダは大概の所へは歩いて行けるような小さな町です。学生や長期旅行者には非常に過ごしやすい所でしょう。


その当時、スペイン語はどの程度話せましたか?

スペインに行く半年前から日本で週1回スペイン語を習っていましたが、ほとんど語学力は0の状態でした。現地の私立の学校に3ヵ月ほど通いましたが、こんなやり方は絶対にお薦めできません。最低1年は現地にいて、一生懸命勉学に励まないと意味はないと思います。語学力がないと、学校のクラスメートと交流するのは同じ日本人同士だったり、英語を使うことになりますから。やはり毎日スペイン語を使わないと語学力は伸びないと思います。私の場合、グラナダ滞在後日本に戻り、半年後の92年春から今度はバルセロナにやって来ました。


どうしてまたスペインに戻ろうと思ったのですか?バルセロナを選んだ訳は?

スペイン語をもう少しまともなレベルに持っていきたかったことや、92年にバルセロナオリンピックがあったので、語学を勉強しながらスペインで仕事ができないだろうかという思いで行きました。その時は、前回のグラナダ滞在で一応スペイン語の基礎ができていたので(とはいえ、1年滞在した割には悲惨な語学力だったと思います)、そこから語学力はぐんと伸びました。バルセロナではバルセロナ大学の外国人コースに通いました。大学の授業はそれ程難しくありませんでしたが、ただスペイン語の能力がある程度ないと授業についていくのが大変だと思います。ヨーロッパ圏の人々は話の内容が専門的になればなるだけ理解力が早いので、彼らと比べると日本人は大変だと思います。


バルセロナではカタラン語が理解できなくても生活できますか?

バルセロナに長く住んでいると話せなくても理解はできるようになります。私は、2.3年した頃から少しずつわかりだしてきました。バルセロナの人は、スペイン語(カスティーリャ語)で話すのに慣れています。外国人に対しては、カスティーリャ語で話してくれるので、理解できなくても生活できるでしょう。


これまで、どんな仕事をしてきましたか?

93年頃から簡単な翻訳や通訳を始めました。仕事をきっかけにスペイン語の勉強もするので、語学力のUPに繋がりました。その頃は、日本語―スペイン語の翻訳者が今と比べて格段少なかったこともあり、3,4年後には普通に生活していけるようになりました。


それはどういうジャンルの翻訳・通訳ですか?

仕事のジャンルは幅広いです。TVアニメや漫画の翻訳もしました。中古フォークリフトの買い付け会社に同行して日本に行くこともありました。仕事の依頼主は全てスペインのエージェンシーや出版社です。日本を拠点とする企業から仕事の依頼はありませんでした。その後、日系企業に通訳として5年間勤務しました。業種は自動車部品関係とプラスチック部品関係です。仕事では会議通訳のコツが生で学べます。1,2人を相手にするのとはまた違って自分が会議を仕切るような度胸も必要なので、この体験は非常に貴重でした。その後ここ1年ほどは業種を変えて、イタリア系のブランドブティックで販売をしています。


スペイン人と一緒に仕事をする上で大変なことはありますか?

スペイン人だけでなく欧米人と働くときはとにかく、自分の主張をはっきりさせることです。黙っていても、気を回してくれることはありません。黙っていたらいいようにうまく使われて、損をするだけです。日本人社会の間で“態度がでかすぎる”と思われる位がスペインでは丁度いいかも知れません。だからといって、主張ばかり強くても煙たがれます。言い回しなどにも気をつけないと、ダイレクトすぎる言い回しは嫌われますね。


日本人はどんな仕事に就けますか?

現在スペインでは日本企業が減っていく一方なので、仕事はなかなか見つからないと思います。ただ、販売業は労働ビザがあれば働き口はあるようです。


労働ビザ取得者の日本人は、どのようにして求人情報を入手するのですか?

口コミです。もうそれしかないでしょう。


労働ビザはいつ取得しましたか?

私は9年程前に「REGLARIZACION」という、不法滞在者を合法化する制度で取得しました。ただ、現在は希望者が多すぎて、労働ビザを取得するのは不可能なようです。基本的には雇う側が、“この人が必要である”という旨の書類と会社の書類を提出し、それを基に審査されます。労働ビザの許可が下りた場合は、その書類を持って日本のスペイン大使館に提出し、ビザが発行されます。それをスペインで、労働・滞在許可書に変えるわけです。とは言っても、なかなか企業側がそれらの手続きをしてくれません。手間や弁護士費用がかかるせいでしょう。しかしながら、まったく不可能ということはないので、がんばってチャレンジしてみてください。


住居について教えて下さい。

いま私は、2部屋+リビング+キッチン+バス付の小さなピソを一人で借りています。家具や冷蔵庫や洗濯機など全部持ち込みで、家賃は450ユーロです。ただこの家賃は4年前に借りたときの値段なので、今なら700ユーロは下りません。スペインでは一般のオフィス事務の給料が手取りで月1000ユーロから1200ユーロなので、それから比べるとこの家賃はとても高いです。ですから、アパートのシェアをしている人は結構多いですよ。個室+リビングと台所は共同使用という形で、だいたい月の家賃が300ユーロから350ユーロというのが一般的です。住居を探すには、インターネットや、週2回発行されている情報誌「PRIMERAMA」にピソ情報がたくさん載っています。


スペインで病気になったことはありますか?

私は「卵巣腫瘍の破裂」という大きな病気にかかって手術をしたことがあります。10日間ほど入院しましたが、個人の保険に入っていたので手術代、病室代、薬代は無料で済みました個人の健康保険は、いざという時のために入っていた方がいいでしょう。料金は月40ユーロ位です。公共の病院の診察代は社会保険料を払っていれば無料です。ただ、予約を取るのに非常に時間がかかるという難点があります。個人の保険に入っていると、その保険会社と契約している病院・個人医の利用が無料になります。多くの有名病院が契約していますし、対応が早いのがいいですね。


10年前のスペインと今と違う点はありますか?

物価がうなぎのぼりに上がっています。治安は年々悪くなりスペイン人でさえ心配しています。犯罪と言えば、昔はひったくりや置き引き程度だったのですが、最近は凶器で脅したり、首絞め強盗などの凶悪な犯罪が増えています。あと、マンガはもちろん、今日本食は大ブームです。


これからも、バルセロナに住み続けるつもりですか?

仕事があり食べていけるようなら、まだ住み続けるつもりです。今後は通訳・翻訳の仕事で食べていけるようにチャレンジしようと思っています。また、絵画を習ったり、銀細工にも挑戦してみるつもりです。今スペインでしかできないものを探していきたいと思っています。

 
(インタビュー・2004年8月)

 

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